わたしの体験

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2020年09月28日 わたしの体験

今回の先輩

Minh(ミン)さん=仮名
  • 2012年 6月短大卒業〈ホーチミン〉
  • 2017年 3月日本語センター入所〈ホーチミン〉
  • 2018年 1月訪日→講習〈千葉〉
  • 2018年 2月建築会社で技能実習〈埼玉〉
  • 2018年 8月失踪〈千葉→群馬→茨城〉
  • 2019年 3月入管に出頭
  • 2019年 8月日越ともいき支援会で帰国待ち〈東京〉

〈1991年生まれ、ベンチェ省出身〉

建築の技能実習先から失踪し不法就労を重ねたミンさん(=仮名)。ミンさんの失踪の経緯や失踪中の生活、どうしたら失踪せずにすんだかを紹介する。

面接に合格

送出機関の先生の家で食事会〈ホーチミンで2017年〉

私は短大を卒業後、ホーチミンの二つの会社で仕事をしました。しかし、日本に行ってもっとお金を稼いで両親を楽にしたいと思い、技能実習に応募しました。2017年3月、送出機関で勉強を始め、企業の面接を受けました。「とび作業は疲れる」と先輩から聞いていたので、他の業種を希望していましたが、面接に5回落ち、6回目で初めて合格したのがとび作業の仕事だったので、そこで働くことにしました。私が送出機関に支払った費用は送出手数料や授業料、寮費などすべて含めて150,000,000ドン(約68万円)でした。これは両親が銀行から借りました。

【編集部からのアドバイス】

・送出機関によって手数料が違います。高い手数料を払ったからといって高い給料の実習先を紹介されるとは限りません。

・ベトナム政府の規定で、技能実習生への日本語教育費は約520時間に対し5,900,000ドン以下、送出手数料は3,600 USD以下(3年契約の場合)となっています。

・送出機関や実習先の選び方はこのリンク先を参考にしてください。

    Link:こんなに違う、送出機関への費用 / 徹底比較

技能実習開始

寮の部屋(9階)からみた満開の桜並木〈埼玉県で2018年〉

私は2018年1月に訪日し、2月から埼玉県の建築会社で技能実習を始めました。送出機関の同級生2人も一緒で、私たちがこの会社で初めての技能実習生でした。毎朝、自転車で会社に行き、会社から日本人の先輩が運転する車で現場に行きました。現場は一戸建てが多く、たまに高層住宅もありました。朝5時に寮を出て夕方6時か7時に帰る生活でした。

私の家計簿(1カ月の平均)

※100円=21,980ドン(2020年9月24日現在)

収入(平均90,000円)
手取り給料

90,000円

※税金、社会保険料、寮費を差し引いた後の手取り額

※差引額=寮費20,000円、水道・光熱費5,000円~6,000円、Wi-Fi 1,600円

支出(平均30,000円)
食費

27,000円

※主に自炊

雑費・交通費

3,000円

差額・貯金(平均60,000~70,000円)
差額

平均60,000~70,000円

※差額は両親に送金

給料への不満

高層住宅の大規模修繕の現場〈埼玉県で2018年2月〉

私たちは同郷の友人や送出機関の同級生などたくさんの仲間とSNSで情報交換をしながら実習生活を送ります。訪日してしばらくすると、私たちは、仕事内容はきついのに、手取り月給(約90,000円)は関東の技能実習仲間の中で最低水準であることが分かりました。

その上、別の建築会社の実習生からこんなことを聞きました。「僕たちの会社では、会社と現場を往復する移動時間の一部に対し残業代が支払われている」。私たちも会社から現場に片道30分~2時間かけて移動していましたが、その時間は無給でした。そこで、私たち3人は移動時間に対して賃金を支払ってくれるよう社長に直訴しました。しかし、社長の答えは「移動時間は仕事ではないので賃金は支払えない」というものでした。

私たちはその後、監理団体にも相談しました。担当者が寮に来たときに、ベトナムの送出機関の通訳にメッセンジャー電話で通訳してもらって交渉しました。しかし、「社長が決めたことだから仕方がない」という答えでした。

安全管理への不満

さまざまな資材が体の近くに落ちてくることがあり、身の危険を感じた

もっと大きな不満は作業現場の安全性でした。日本人の先輩が高所から金属パイプなどを下に落とし、私に受け取るように指示します。最初は取り損ねることもあり、「床に傷が付く」としかられました。しかし、そのような受け渡しは危険です。また、頭の近くに足場の金属板(アンチ)などが落ちてくることもありました。私は「この会社では、作業現場の安全が徹底されておらず、働き続けるのは非常に危険だ」と感じました。そこで、送出機関に「別の仕事に移れないか」と相談しましたが、「今はできない」と言われました。

「この会社には期待できない」と絶望

寮を後にして同僚と2人で失踪

こうして私たちは「この会社は給料が低すぎるし、安全面の改善も期待できない」と思うようになりました。そして、私と同僚の1人は失踪を決意しました。残る1人も私たちの半年後に失踪することになります。今から思うと、外国人技能実習機構(OTIT)に相談すべきでしたが、Wi-Fiだけを利用して携帯電話の通話契約をしていなかったのと、OTITのホームページから相談内容を送信できることを知らなかったので、相談しませんでした。

【編集部からのアドバイス】

技能実習生が受入企業から失踪すると在留資格が取り消される恐れがありますし、在留期間を過ぎると「不法滞在」になります。また、入管の許可なく別の職場で働くと「不法就労」になります。不法滞在も不法就労も犯罪(出入国管理法違反)です。

実習先での問題はまず監理団体に相談し、それでも解決しない場合は、外国人技能実習機構(OTIT)に必ず相談してください。下記ページからベトナム語で相談内容を送信できます。電話もあります(0120-250-168)。

☆万一、OTITに相談しても解決しない場合は、下記のような民間の相談窓口もあります。

日越ともいき支援会(E-mail)n.tomoiki@gmail.com

外国人実習生支援(Facebook)https://www.facebook.com/jissyuseisien/

失踪

寮の近くの駅。この駅から電車に乗って千葉県に行きました。

実習を始めて約半年後の2018年8月、給料日の翌日に私と同僚は黙って寮を去り、千葉県の実習生の寮に行きました。そして、そこで約2カ月間住ませてもらいました。私たちと同じ送出機関を出た仲間3人が住んでいる寮でした。

そこに住みながら、人づてに仕事を探していたところ、ベトナム人仲間の1人からメッセージがあり、仕事内容や給料が書かれていました。少ない給料でしたが、なかなか仕事が見つからなかったので、妥協しました。失踪者に仕事を紹介するFacebookページがありますが、「紹介料をだまし取られることも多い」「よい仕事が少ない」などと聞いていたので、私は使いませんでした。

弁当工場で不法就労(約5カ月間)

〈資料写真〉

紹介された勤務地は群馬県でした。メッセンジャーで連絡をくれた人の知人、デュックさん(=仮名)が働いている食品加工工場で、弁当箱におかずを入れたり、弁当箱のふたを閉めたりする仕事でした。デュックさんの同僚のベトナム人が何らかの事情で休みがちだったので、私はその人が休む日だけ“替え玉”として働きました。夜にデュックさんからメッセンジャーで連絡があれば、翌日出勤するという形態でした。私はこの工場で働くにあたって、会社の責任者とは一度も会わず、デュックさんに連れられて職場に行き、作業着もデュックさんから受け取り、デュックさんの指示に従って働きました。

私の1カ月の勤務日数は10日間に満たず、手取り月給は約60,000円でした。月給はデュックさんから手渡しで受け取りました。私はデュックさんがどういう在留資格で働いているのかさえ知りませんでした。私はデュックさんら5、6人のベトナム人と同じチームで働きました。大きな工場でしたが、ほとんど会話をしなかったので、全体でベトナム人が何人ぐらいいたのか分かりません。また、全身を作業着で覆って目だけを出していたので、私のことを気にする人もいませんでした。

住宅は別ルートで紹介され、ベトナム人6人で部屋をシェアしました。1人の家賃は月10,000円、水道・光熱費は5,000円~7,000円で、ほかの5人がどこで働いていたかは知りません。このときは給料が少なすぎて実家に送金できなかったので、次の仕事を探しながら働きました。

イチゴ農園で不法就労(約1年間)

在留カードの提出なしでイチゴ園に“就職”

約5カ月後、茨城県のイチゴ農園に移りました。ここを紹介してくれたのは送出機関の同級生で、埼玉県の別の建築会社から失踪したタムさん(=仮名)でした。このイチゴ農園で先に働いていたタムさんに連れられて農園の経営者(日本人)に会いましたが、彼は私の在留カードをチェックせず、私の名前を聞いて仕事内容を説明しただけでした。

イチゴ農園での主な仕事は収穫でした〈資料写真〉

イチゴ農園での主な仕事は収穫でした。朝7時~夕方5時が定時で、残業も時々ありました。手取り月給は平均約15万円。毎月8~11万円を実家に送ることができ、ここで働き始めて約8カ月でベトナムでの借金を完済することができました。不法就労でしたが、日本に来て初めて安定した気持ちになりました。私たちには多額の借金があるので、最低限の収入がないと気持ちが落ち着かないのです。

肩身の狭い生活

失踪中の外出は食品の買い出しぐらいでした〈群馬県で2019年〉

住居は、タムさんらイチゴ農園の同僚4人とシェアし、1人あたりの家賃(水道・光熱費含む)は10,000円だけでした。同居の同僚も全員ベトナム人の失踪者で、私たちは全員、現金の手渡しで給料を受け取っていました。

群馬県でも茨城県でも不法滞在なので肩身の狭い生活でした。外出時に警察官に職務質問されて不法滞在が発覚するとベトナムに強制送還されることもあり、実家への送金ができなくなるので、休日もあまり外出しないようにしました。買い物も、外で買うのは食品ぐらいで、他の商品はインターネットで購入(代金引換)しました。私は外で警察官に会いませんでしたが、仲間は警察官を見かけると道路わきなどに隠れたそうです。

入管に出頭

入管に出頭するために降りた東京の品川駅〈2020年3月〉

2020年になって新型コロナウイルスの感染が日本で拡大し、両親がとても心配し、早く帰国するように強く言われました。また、少し前に茨城県でベトナム人が入管法違反で逮捕され、私も窮屈な生活に疲れ始めていました。そこで、2020年3月下旬、東京入管に出頭しました。入管では「出頭確認書」を手渡されてその日に仮放免され、翌月、もう一度入管に行くと「自分で航空券を買って帰国してください」と言われました。

仕事を辞めてからは節約のため食料も十分に買えませんでした〈千葉県で2020年3月〉

イチゴ園を出てからは、千葉県の友人宅に月23,000円で住ませてもらっていました。私はイチゴ園で最後にもらった給料で生活をしていましたが、新型コロナの影響でアルバイト先が見つからず、6月に実家から約10万円を送ってもらいました。その後、入管で出会ったベトナム人の紹介で8月12日からは東京のNPO法人「日越ともいき支援会」に住ませてもらい、帰国便の順番を待っています。

これから日本に来る皆さんは技能実習先の手取り給料や評判などをよく調べてから面接を受けるようにしてください。そして、希望する会社の面接に受かるよう、日本語の勉強もしっかりやってください。

今回の先輩

Mình(ミン)さん=仮名

  • 2012 年6月短大卒業〈ホーチミン〉
  • 2017年 3月日本語センター入所〈ホーチミン〉
  • 2018年 1月訪日→講習〈千葉〉
  • 2018年 2月建築会社で技能実習〈埼玉〉
  • 2018年 8月失踪〈千葉→群馬→茨城〉
  • 2019年 3月入管に出頭
  • 2019年 8月日越ともいき支援会で帰国待ち〈東京〉

〈1991年生まれ、ベンチェ省出身〉

建築の技能実習先から失踪し不法就労を重ねたミンさん(=仮名)。ミンさんの失踪の経緯や失踪中の生活、どうしたら失踪せずにすんだかを紹介する。

面接に合格

私は短大を卒業後、ホーチミンの二つの会社で仕事をしました。しかし、日本に行ってもっとお金を稼いで両親を楽にしたいと思い、技能実習に応募しました。2017年3月、送出機関で勉強を始め、企業の面接を受けました。「とび作業は疲れる」と先輩から聞いていたので、他の業種を希望していましたが、面接に5回落ち、6回目で初めて合格したのがとび作業の仕事だったので、そこで働くことにしました。私が送出機関に支払った費用は送出手数料や授業料、寮費などすべて含めて150,000,000ドン(約68万円)でした。これは両親が銀行から借りました。

送出機関の先生の家で食事会〈ホーチミンで2017年〉

【編集部からのアドバイス】

・送出機関によって手数料が違います。高い手数料を払ったからといって高い給料の実習先を紹介されるとは限りません。

・ベトナム政府の規定で、技能実習生への日本語教育費は約520時間に対し5,900,000ドン以下、送出手数料は3,600 USD以下(3年契約の場合)となっています。

・送出機関や実習先の選び方はこのリンク先を参考にしてください。

Link:こんなに違う、送出機関への費用 / 徹底比較

技能実習開始

私は2018年1月に訪日し、2月から埼玉県の建築会社で技能実習を始めました。送出機関の同級生2人も一緒で、私たちがこの会社で初めての技能実習生でした。毎朝、自転車で会社に行き、会社から日本人の先輩が運転する車で現場に行きました。現場は一戸建てが多く、たまに高層住宅もありました。朝5時に寮を出て夕方6時か7時に帰る生活でした。

寮の部屋(9階)からみた満開の桜並木〈埼玉県で2018年〉

私の家計簿(1カ月の平均)

※100円=21,980ドン(2020年9月24日現在)

収入(平均90,000円)
手取り給料

90,000円

※税金、社会保険料、寮費を差し引いた後の手取り額

※差引額=寮費20,000円、水道・光熱費5,000円~6,000円、Wi-Fi 1,600円

支出(平均30,000円)
食費

27,000円

※主に自炊

雑費・交通費

3,000円

差額・貯金(平均60,000~70,000円)
差額

平均60,000~70,000円

※差額は両親に送金

給料への不満

私たちは同郷の友人や送出機関の同級生などたくさんの仲間とSNSで情報交換をしながら実習生活を送ります。訪日してしばらくすると、私たちは、仕事内容はきついのに、手取り月給(約90,000円)は関東の技能実習仲間の中で最低水準であることが分かりました。

その上、別の建築会社の実習生からこんなことを聞きました。「僕たちの会社では、会社と現場を往復する移動時間の一部に対し残業代が支払われている」。私たちも会社から現場に片道30分~2時間かけて移動していましたが、その時間は無給でした。そこで、私たち3人は移動時間に対して賃金を支払ってくれるよう社長に直訴しました。しかし、社長の答えは「移動時間は仕事ではないので賃金は支払えない」というものでした。

私たちはその後、監理団体にも相談しました。担当者が寮に来たときに、ベトナムの送出機関の通訳にメッセンジャー電話で通訳してもらって交渉しました。しかし、「社長が決めたことだから仕方がない」という答えでした。

高層住宅の大規模修繕の現場〈埼玉県で2018年2月〉

安全管理への不満

もっと大きな不満は作業現場の安全性でした。日本人の先輩が高所から金属パイプなどを下に落とし、私に受け取るように指示します。最初は取り損ねることもあり、「床に傷が付く」としかられました。しかし、そのような受け渡しは危険です。また、頭の近くに足場の金属板(アンチ)などが落ちてくることもありました。私は「この会社では、作業現場の安全が徹底されておらず、働き続けるのは非常に危険だ」と感じました。そこで、送出機関に「別の仕事に移れないか」と相談しましたが、「今はできない」と言われました。

さまざまな資材が体の近くに落ちてくることがあり、身の危険を感じた。

「この会社には期待できない」と絶望

こうして私たちは「この会社は給料が低すぎるし、安全面の改善も期待できない」と思うようになりました。そして、私と同僚の1人は失踪を決意しました。残る1人も私たちの半年後に失踪することになります。今から思うと、外国人技能実習機構(OTIT)に相談すべきでしたが、Wi-Fiだけを利用して携帯電話の通話契約をしていなかったのと、OTITのホームページから相談内容を送信できることを知らなかったので、相談しませんでした。

寮を後にして同僚と2人で失踪

【編集部からのアドバイス】

技能実習生が受入企業から失踪すると在留資格が取り消される恐れがありますし、在留期間を過ぎると「不法滞在」になります。また、入管の許可なく別の職場で働くと「不法就労」になります。不法滞在も不法就労も犯罪(出入国管理法違反)です。

実習先での問題はまず監理団体に相談し、それでも解決しない場合は、外国人技能実習機構(OTIT)に必ず相談してください。下記ページからベトナム語で相談内容を送信できます。電話もあります(0120-250-168)。

☆万一、OTITに相談しても解決しない場合は、下記のような民間の相談窓口もあります。

日越ともいき支援会(E-mail)n.tomoiki@gmail.com

外国人実習生支援(Facebook)https://www.facebook.com/jissyuseisien/

失踪

実習を始めて約半年後の2018年8月、給料日の翌日に私と同僚は黙って寮を去り、千葉県の実習生の寮に行きました。そして、そこで約2カ月間住ませてもらいました。私たちと同じ送出機関を出た仲間3人が住んでいる寮でした。

そこに住みながら、人づてに仕事を探していたところ、ベトナム人仲間の1人からメッセージがあり、仕事内容や給料が書かれていました。少ない給料でしたが、なかなか仕事が見つからなかったので、妥協しました。失踪者に仕事を紹介するFacebookページがありますが、「紹介料をだまし取られることも多い」「よい仕事が少ない」などと聞いていたので、私は使いませんでした。

寮の近くの駅。この駅から電車に乗って千葉県に行きました。

弁当工場で不法就労(約5カ月間)

紹介された勤務地は群馬県でした。メッセンジャーで連絡をくれた人の知人、デュックさん(=仮名)が働いている食品加工工場で、弁当箱におかずを入れたり、弁当箱のふたを閉めたりする仕事でした。デュックさんの同僚のベトナム人が何らかの事情で休みがちだったので、私はその人が休む日だけ“替え玉”として働きました。夜にデュックさんからメッセンジャーで連絡があれば、翌日出勤するという形態でした。私はこの工場で働くにあたって、会社の責任者とは一度も会わず、デュックさんに連れられて職場に行き、作業着もデュックさんから受け取り、デュックさんの指示に従って働きました。

〈資料写真〉

私の1カ月の勤務日数は10日間に満たず、手取り月給は約60,000円でした。月給はデュックさんから手渡しで受け取りました。私はデュックさんがどういう在留資格で働いているのかさえ知りませんでした。私はデュックさんら5、6人のベトナム人と同じチームで働きました。大きな工場でしたが、ほとんど会話をしなかったので、全体でベトナム人が何人ぐらいいたのか分かりません。また、全身を作業着で覆って目だけを出していたので、私のことを気にする人もいませんでした。

住宅は別ルートで紹介され、ベトナム人6人で部屋をシェアしました。1人の家賃は月10,000円、水道・光熱費は5,000円~7,000円で、ほかの5人がどこで働いていたかは知りません。このときは給料が少なすぎて実家に送金できなかったので、次の仕事を探しながら働きました。

イチゴ農園で不法就労(約1年間)

約5カ月後、茨城県のイチゴ農園に移りました。ここを紹介してくれたのは送出機関の同級生で、埼玉県の別の建築会社から失踪したタムさん(=仮名)でした。このイチゴ農園で先に働いていたタムさんに連れられて農園の経営者(日本人)に会いましたが、彼は私の在留カードをチェックせず、私の名前を聞いて仕事内容を説明しただけでした。

在留カードの提出なしでイチゴ園に“就職”

イチゴ農園での主な仕事は収穫でした。朝7時~夕方5時が定時で、残業も時々ありました。手取り月給は平均約15万円。毎月8~11万円を実家に送ることができ、ここで働き始めて約8カ月でベトナムでの借金を完済することができました。不法就労でしたが、日本に来て初めて安定した気持ちになりました。私たちには多額の借金があるので、最低限の収入がないと気持ちが落ち着かないのです。

イチゴ農園での主な仕事は収穫でした〈資料写真〉

肩身の狭い生活

住居は、タムさんらイチゴ農園の同僚4人とシェアし、1人あたりの家賃(水道・光熱費含む)は10,000円だけでした。同居の同僚も全員ベトナム人の失踪者で、私たちは全員、現金の手渡しで給料を受け取っていました。

群馬県でも茨城県でも不法滞在なので肩身の狭い生活でした。外出時に警察官に職務質問されて不法滞在が発覚するとベトナムに強制送還されることもあり、実家への送金ができなくなるので、休日もあまり外出しないようにしました。買い物も、外で買うのは食品ぐらいで、他の商品はインターネットで購入(代金引換)しました。私は外で警察官に会いませんでしたが、仲間は警察官を見かけると道路わきなどに隠れたそうです。

失踪中の外出は食品の買い出しぐらいでした〈群馬県で2019年〉

入管に出頭

2020年になって新型コロナウイルスの感染が日本で拡大し、両親がとても心配し、早く帰国するように強く言われました。また、少し前に茨城県でベトナム人が入管法違反で逮捕され、私も窮屈な生活に疲れ始めていました。そこで、2020年3月下旬、東京入管に出頭しました。入管では「出頭確認書」を手渡されてその日に仮放免され、翌月、もう一度入管に行くと「自分で航空券を買って帰国してください」と言われました。

入管に出頭するために降りた東京の品川駅〈2020年3月〉

イチゴ園を出てからは、千葉県の友人宅に月23,000円で住ませてもらっていました。私はイチゴ園で最後にもらった給料で生活をしていましたが、新型コロナの影響でアルバイト先が見つからず、6月に実家から約10万円を送ってもらいました。その後、入管で出会ったベトナム人の紹介で8月12日からは東京のNPO法人「日越ともいき支援会」に住ませてもらい、帰国便の順番を待っています。

これから日本に来る皆さんは技能実習先の手取り給料や評判などをよく調べてから面接を受けるようにしてください。そして、希望する会社の面接に受かるよう、日本語の勉強もしっかりやってください。

仕事を辞めてからは節約のため食料も十分に買えませんでした〈千葉県で2020年3月〉